241 線路上の雪燕
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〔孫娘といくらかやり取りした後、ペラジーが共にやってきていたなら、彼を見て老婆は訝しげな顔をしただろう。 シェリーが幾らかの経緯を話すと、ふふんと鼻を鳴らし〕
「泊めろ、だって? また急な話だねえ。 マ、おまえに免じてこの子を信用するとして、だ。 ゆっくり朝飯でも食いながら この子とおまえの話をじっくり聞かせてもらおうじゃないか」
〔ペラジーを「この子」と呼びながら、 老婆は短い列車旅で出来た娘の友人の宿泊を許可したのだった。*〕
(158) sane 2015/12/05(Sat) 22時頃
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〔ミス、で途切れた言葉を追うと、 紳士はなんとも言えない微笑を浮べていた。 そこにある意味も知らないシェリーは、 ただ彼を見上げて言葉の続きを待つ。
と、後ろから「ペラジーは私ですが……?」と 彼>>161の声が聞こえた。 キャロライナの訂正を聞いて漸く理解する。>>163 やっぱり男の子だったらしい。〕
そうよね。
〔まあ、外国の人からすれば色々とわかりづらいのかもしれない。顔の違いだとか、名前の違いだとか。〕
(169) sane 2015/12/05(Sat) 22時半頃
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〔そこは軽く流すことにして、 トヨタ・ココノエと名乗る紳士の言葉に、 「まぁ」とほんのり驚いてから>>159〕
お仕事、って、そういうことだったのね。 かっこいい。
じゃあ本当に貴方の名前が歴史に残るか、 三十年後に確かめることにするわ
〔そういって、 こちらは能天気にころころ笑ったのだった。*〕
(170) sane 2015/12/05(Sat) 22時半頃
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わかったわ。 その時は、皆に自慢しちゃう。
[手をとられたので、きょとんとして彼を見上げた。] [それから、彼がしたことにはびくりと体を固まらせて あわあわと取られた手の指先を屈めもした。]
……もう!
[恥ずかしいやら、なにやらで半ば怒りながら するりと手を引くと 複雑そうな面持ちで彼を見ては]
お元気でね。
[そういって、”西洋式”の挨拶を ――きちんとした作法で――返したことだろう。>>173*]
(192) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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― 青いうみねこ亭 ―
[柔らかな微笑みと会釈に、 シェリーの祖母も気をよくしたようで>>174 おいしい朝飯をつくるから待ってなさい、と やる気のよう。
ペラジーに問いかけられたシェリーは]
そうね。まずは、そこから話しましょう。
[雪燕に乗るまで。乗ってから。 その短くも濃密な時間を語っていきましょう、と 彼の言葉に同意した。>>174]*
(194) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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『きょうは おみせがおやすみです。 いいてんきだから おばあちゃんといっしょに おでかけができます。
かえりに おいしい おかしをかってもらうんだ』
(198) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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― エピローグ ―
[キィ、と扉が開く音。 からん、とベルが鳴る音。 こつん、と杖を突く音。 かちゃり、鍵を閉めた音。
陽射しが柔らかに差し込む店の中。
「いくよ」
老女は静かな声で 二階の居住スペースに居る人に声をかけた。
「はぁい」と返事をして日記を閉じた少女が駆けてくる。 丸い目に、柔らかな茶髪が印象的な少女だ。
少女が掌を差し出すと、 小さな手を皺くちゃの手が握り返した。*]
(199) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[記念公園の一角に、それは安置されていた。]
「おばあちゃん、ここがおばあちゃんの来たかったところ?」 「そうよ」
[そう答えた老女の視線の先には、 黒い古びた車体がある。 かつては黒く光っていたボディも、今は煤けて、 老兵のような趣をかもし出している。]
「今の列車と全然ちがうね、おばあちゃん」
「そうね。私はこれに乗って来たのよ。 この重そうな体が、 たくさんの人を乗せて、寒い中を走ったものよ 走るときに鳥のように囀りもしたわ。」
(200) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[老女は懐かしそうに車体を見上げながら言う。]
[たった一晩の旅でも、沢山の出会いが詰まっていたと。 リコリスのような赤毛の少女に、 人の好いやさしい青年。 気立ての良い紳士は、 老女の実家でとある酒を購入してくれたそうだが、 その後の行方がわからなかった。
東国の紳士に、異国のどこか寂しげな少年。 金髪の物憂げな青年。 それから――…………]
「スウェルグでもいろんなことがあった筈だけど…… どうしてかしらね。 何十年経った今も、たまに夢に見るのよ。 あの列車の旅を」
[そういってガーベラの花束を列車の傍に添えた。 海風が深く皺の刻まれた顔を撫でていった。]
(201) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[瞬きを一つ、二つ。 老女は少女の方に向き直り、笑顔で言う。]
「帰りましょうか。 途中でおやつを買ってあげる。 それで、暖めたミルクに蜂蜜をいれたのと一緒に頂きましょう」
「わぁい!」
[喜ぶ少女の手を引いて、
「雪燕」に一礼すると、その場を去った。*]
(202) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[家に帰り着いた少女は、 ポストの中に封筒が投函されているのを見つけた。
指輪などが詰められた小さなオルゴールを 鳴らしては撫でている老女にそれを渡す。
老女は差出人欄をしげしげと眺めると]
あら、あら。
[ふふ、と微笑んで、懐かしげにその名前をなぞった。 差出人は――。 **]
(203) sane 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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