208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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……馬鹿正直に話したきゃ話せばいいじゃねぇか。 珍しいことでも、ない、……
[例えば二人まとめて風邪を引いたとして。 その原因を明日以降、覚えていられる保証はあるのだろうか。 包帯を変える手付きこそ覚えていれど、交わした会話は覚えていない。 きっとこれも、そんな風に忘れてしまう事の一つになるのではないだろうか。
そんな予感を振り払うように、目を閉じる。目を開く。
どちらが衝動に負けているのか、もう、わからない。 強制力のない懇願は、その返答>>303に振り払われる。 それに向けた視線は、僅か不満の混ざるものだった。 けれど、続く言葉に一瞬だけ瞳は丸く見開かれて。]
―――……、あ、ァっ、
[何と返すか躊躇っているうちに、肌に刻まれる赤い跡。 包帯を避けるように残された朱に、かっと肌が熱くなる。 そんな風に熱を帯びた肌に唇を押し付けられていれば、男女の交わりとは違う、愛撫を受ける側であっても熱は集まるというものだ。]
(7) 2014/12/24(Wed) 09時頃
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仕、置き、……?
[ぼうっとした声で、クアトロの言を繰り返して 下衣を寛げさせる動きに、自ら腰を浮かせ、早く開放を、と無言で強請った。 クアトロ以外。そう、今は、クアトロだけを。
これからも、と、彼が内に抱くとは知らず、見下ろすのは白いバンダナの巻かれた腕。 汚すぞ、と静止することもできないでいれば、そっと指先でその結び目に触れた。]
……っ、そんな、……焦らすな、よ…… あ、っ、 ……あ、 ァ、
[声を跳ね上げ、身動ぐ度に、背の方でじわり、じわりと滲む感覚。 伸ばした指先を見上げる瞳の方へと伸ばせば、普段はバンダナの下にあるその髪に触れた。
堪え性は、元より無い。 熱を放ったのは、その口の中だったか、外だったか、―――それとも寸前に堰き止められたか。
何れにしろその唇が離れたならば、次は自分の番だと言わんばかりに、荒い息の中、姿勢を入れ替えるよう促しただろう。 されるばかりは、性に合わない。*]
(8) 2014/12/24(Wed) 09時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 09時頃
続きはいつ?
[ 俺がこの気持ちを覚えてるうちに、道行き彼に囁き。*]
どうか、あっしの隣に居ておくれ……
[口から出たのはそんな願いだった。]
その時にお前さんが隣に居てくれたら、
あっしはもっと"好い"気分になるのだけれど……?
[初めてか、もう何度目になるのかさえ、自分でもわからない言の葉。
他の吸血鬼にも囁いただろうか。
それとも、彼にしか囁いていないのか。
忘れてもいいという呪いの言葉を、魔法使いは落としていく。]
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っは、ぁ、…… ……ッぁ、 あ、 ――――― ……、
[果てる瞬間上がるのは、一際高い声。 その唇の向こうに放った熱を飲み下すのを見下ろすようにしながら、荒い息のまま体を起こす。 貼りついていた背のガーゼが、包帯の内で剥がれていく。 その感覚に眉を寄せながらも、熱のまわった上体を起こした。]
……次、交代、 俺ばっかじゃ不こ……
[不公平だ。 そう告げようとした言葉が途切れたのは、額を叩く軽い衝撃によって。 先程まで熱を孕み、見上げる視線を潤ませていたのは何処へ行ったか。
ぱち、と呆気にとられるように瞬く。]
(25) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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[繰り返される、「仕置き」の言葉。 付け加えられる、「また今度」の言葉。
僅かに眉を寄せれば、大袈裟に溜息を一つ。]
……物覚え悪いの、わかってるくせに。
[わざとらしく、唇を、尖らせる。]
(26) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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………
[忘れていい、そう前置いて告げられた愛してるの言葉。
ならば自分もと同様に言葉を重ねればいいだろうに、それができないのは何の躊躇いからか。
その言葉を、口にする事に慣れていない、だけではないのだろう。
遮るように、その唇ごと、伸ばした掌で覆った。]
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……悪い、 ……今日は寝る。 『また今度』……続き含めて全部、しようぜ。
……包帯変えて。
[そう告げて、顔を寄せれば頬に唇を押し当てる。 挨拶のように、触れるだけで離れれば、首を傾げて返答を待つ。
どうせ包帯の結び目は、自分じゃ上手く解けやしない。*]
(27) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 16時頃
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― 翌朝 自室 ―
[良くない夢を見た。 けれど、その夢の内容すら曖昧だ。
曖昧なのは、夢の事だけだろうか。 昨晩、交わした言葉がもう、曖昧だ。 相手がクアトロであったことは、覚えているのだけれど。
寝台の上、そんなようなことを考えながら体を起こしたのはきっと朝食のベルが鳴るよりずっと前。 昨日立てた、今日の予定を思い出しながら寝台から抜け出る。
洗い物を入れた籠を抱え、早朝の空気の満ちる廊下を行く。 下位の者に頼むという発想は、無かった。 働く事の方が性に合っている。 それはきっと、此処に来る前からもそうだったのだろう。
裏庭に出れば洗濯道具を引っ張り出し、朝陽の元、汚れたシャツを手で洗っていく。 自分がここに来て、何年が経っているのだろう。 洗濯道具だって、もっと便利なものが登場しているのだろうが、気付けば手に馴染んだ方法を用いていた。]
(31) 2014/12/24(Wed) 16時頃
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[深い紺のシャツを、洗剤を溶かした水へと浸す。 黒く固まった血液が、じわりと溶けては泡に紛れていった。]
……借り、返さないと……
[誰かに、貸しを作っていた。 ただそれだけを断片的に思い出せば、慎重にその糸を手繰ろうと試みる。 せめて、誰が口にしたのかという事だけでも、思い出せれば。
けれど、細く弱い記憶の糸が切れてしまえば溜息を一つつく。 無駄だと、わかっている。 いつだって、そんな風に忘れていくのだから。
ゆるりと首を一つ横に振れば、紺に紛れてしまった黒い赤を洗い落とすべく、洗濯作業へと没頭していく。*]
(32) 2014/12/24(Wed) 16時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 16時頃
おやすみ。
[頬を触れる挨拶の口付けは、まるで『さよなら』のように感じた。
忘れていいと謂った。
だから、それでも構わない。
──そう思っているなら、バンダナを巻いたりなんてしなかったろう。
額へ口付けてから、男は部屋をあとにした*]
[来た時よりも皺の寄った気がする地に落ちた紙。
拾い上げる前に此方がその華奢な体を”拾い上げてしまう。”
少し挑発めいてしまったか、と暫し口を閉ざす参休を伺う。
時々みる食事だってさほど大食いとは言えない自分よりも量は大幅に削られたメニューだからその腕の中の身体は壊れてしまうんじゃないかと危惧してしまう。
自分が促すまま寝台へと膝を付く彼に笑みを浮かべ、]
嗚呼、是非、ね?イイことは知りたいかな。
……ン、
[耳元へ寄る指先を敏感に感じながらふる、と震える。
空気の振動を普通より少しだけ、敏感な耳朶は僅かな刺激を受け取り、そういえば食堂でもこうして触れたか、と僅かに熱の篭る息を漏らしながら思った。]
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― 晩 自室にて ―
ん。……あとついでに、軽くで良いから汗拭いて。
[布はそこ、新しい包帯はそこに、と其々の方を指差して。 図書館でそうする様に、寝台の上に腰かけたまま、背を向ける。
解かれる包帯、露わになる背。 ガーゼをあてる手つき、包帯を巻く仕草、これらの感覚は、よく知っている、覚えている。
触れた唇に上がりかけた声を飲み込めば、灰のシャツに袖を通す。 その最中、腕に巻いたままのバンダナの存在に気付くだろう。 いいのか、と、視線で問うも、言葉が得られなければ詮索はしなかった。 促されるままに、寝台へと横たわる。]
……部屋、戻っていいぞ、
[そう告げるも、きっと彼は部屋を出ない。 観念したように目を閉じれば、寝息が聞こえだすのも直ぐだろう。 額に触れた唇に、くぐもった声にならない音を発して。]
(39) 2014/12/24(Wed) 17時頃
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……おやすみ、
[かろうじて、言葉になったのはただそれだけ。
遠のく気配にも、戸の開閉音にも気付かずに、眠りに落ちる。
腕に巻いたバンダナの事すらも、ゆっくりと眠りの中へと沈んで。*]
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― 朝 裏庭 ―
[裏庭の一角、適当な木にロープを張れば、洗った服を干していく。 残り半分といったところでベルの音が聞こえれば、自然、手は焦るものとなるだろう。
それでも、地面に落とすといった失敗はせずにすべてを干し終われば、捲っていた袖を解く。 その片腕、包帯だけでないものが結わえられていることをようやく思い出すか。]
………
[あの時、このバンダナを腕に巻いた彼の真意はわからない。 貰ってしまってもいいものなのだろうか、それともこれは借りたものだったか。 どうしてこうも、記憶が曖昧なのだろう。 他の者よりもずっと、ずっと記憶が残らないのは何故なのだろう。
脳裡に甘く響くのは、吸血鬼の「忘れてしまえばいい」という、幼子をあやすかのような言葉。
結び目に軽く触れ、暫し浸るように考え込んだ後。 袖を元のように戻して、掃除道具を戻しに向かう。 開いた襟の奥、鎖骨に残る紅い跡は未だ、思い出せず。]
(41) 2014/12/24(Wed) 17時半頃
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― 食堂 ―
[食堂まで早足で向かえば、いつも通りの定位置に腰かける。 隣席に、いつもの姿は既にあっただろうか。
椅子につけば、皿に乗せられたクロワッサンを取り、端を一口齧って。]
……、
[何をしているのだ、と、我に返る。 まだ、席に誰が着いているのかも確認していないというのに。
―――― こんな失敗、した事は無かったというのに。
食べかけのクロワッサンを皿に戻せば、行儀悪く片膝を抱える。 「食えよ」と言う声と、「待て」と告げたかつての声と。
包帯の向こう、痛まぬ筈の傷が疼く気配。 膝頭に額をつければ、目を伏せた。]
(43) 2014/12/24(Wed) 17時半頃
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[目を伏せる。
今『は』鮮明に思い出せる。
声も匂いも味も、表情も。
巻いた包帯も、剥がしたガーゼも、拭いた体も。
おやすみの、言葉も。]
───いつ、忘れる?
[『昔』を忘れてしまった時のように。]
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……木乃伊じゃない、……です。何度も言わせんな、……言わせないで、ください。 一回くらい、まともに、ヒューって、……呼んで、……
[冗談めかした言葉に反論する声は、言い淀む。 僅か、と称するには少し長い時間の間の後、緩やかに首を横に振った。
この声が、自分の名を正しく呼んだことは、ある。 それも、つい昨日の事だ。
何故、それを直ぐに思い出せないのか。 きつく、眉を寄せる。
忘れればいいと、遠く囁く声。 本当に、忘れてもいいのだろうか。 答えが見つかる前に、その疑問すらも遠のいていく。]
(53) 2014/12/24(Wed) 19時頃
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……発音できないわけじゃないんなら、名前で呼んでください。 それに、俺はこの色、気に入ってるんで。 チョウスケさんには、見窄らしく見えるかもしれねぇけど、……
[皿の上に手を伸ばし、一口を齧ったところで言葉も、動きも止まる。 まだ温かなクロワッサンはさっくりと香ばしく、バターの香りがした。]
そう、……ですね。 ……美味い、……です。
[パンを皿に戻し、顔を伏せながら、食事を始めるチョウスケへと答える。 言葉に嘘は、無かった。]
(54) 2014/12/24(Wed) 19時頃
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……覚えていた、けど。 いつ、忘れるかわからない、……。
[絞り出すように、吐き出す声。 もっと、色々な事を忘れているのではないだろうか。 大切に、覚えていなくてはいけないようなことも。
見窄らしい色、上等な色、ときて、次は“同じ”赤毛頭と。 僅か、顔を上げればクロワッサンを齧る横顔に視線を向け苦笑する。
そのパンが、半分ほどの大きさになるまで食べ進められたところで、自分も改めて皿の上へ手を伸ばすだろう。 さくりと、その表面に歯を立てて。]
……そういえば、裏庭に洗濯紐を張ったんだけど。……ですが。 洗う物あれば、洗っておくけど、……何か、言ったか? [籠ったような独り言>>56は、よく聞き取れず。 問い掛けながら、首を傾ぐ。]
(57) 2014/12/24(Wed) 20時頃
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[小突かれるままに、傾げた頭は揺れる。 そう言われてしまえば、深く追及はできない。
何でもかんでも、という言葉に、視線を逸らす。 最後の一欠片を、口に運んで。]
……働いている方が、好きだから。 だから、別にチョウスケじゃなくても良い、んだと、思う、……思います。
けど、一番俺に、色々押し付けてくれるの、チョウスケだから。 ……迷惑なら、控える、ます……。……主に何か、仕事を貰うから。
[掃除にしろ、洗濯にしろ。 チョウスケならば、何か仕事を与えてくれるのではと、勝手に抱いた期待だ。 甘えていたのだと、思う。 それは、部屋の掃除を任された回数が、一度や二度で無かったからだろうか。
同じ赤の、違う髪色の方へと視線を戻せば、顔色を窺うように。]
(65) 2014/12/24(Wed) 21時頃
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[もてなしを期待して、この屋敷に来たわけではないのだと、思う。 もしそうならば、こんな風に仕事を探して回っている筈は、ないのだから。 けれど、主に抱く想いは、「救ってもらった」という、ただその言葉だけ。 今も揺るがずにそれを抱き続けられるのは、何故だろうか。
館の掃除をという言葉に、小さく頷く。 当然だ、10人を超える人間が十分に生活できる空間なのだから、二人では到底手が回るまい。 調度品の少ないところから、勝手に着手していこうか。 館内にいれば、何れ誰かに仕事を任されるだろうし。 何も無ければ、読書へと戻ればいい。 今の章を、何度読んだかも忘れてしまったけれど。
そんな風に、大体の計画を立て終えれば、空のカップをテーブルに戻し、席を立つ。]
……ニコラスは、……何か、洗い物とか、あるか? あったら廊下出しといて。 簡単なものなら俺が洗っとくから。
[常通り、優雅な仕草で席へと向かう、もう一人の下位の者へとそう声をかければ、食堂を後にした。]
(74) 2014/12/24(Wed) 21時半頃
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ヒューは、丁助がまだ席にいたのならば、軽く頭を下げて席を離れただろう。
2014/12/24(Wed) 21時半頃
─ヴェールの向こう側─
「クアトロ、できたかい?」
ああ、出来たよ。
「こいつはいい出来だ!」
そうかい、そりゃよかった。
[淡々とした声と、無駄にトーンの高い声が会話をしている。
ブツ切れになる映像は頭痛のせいでノイズがかかった。]
[大きなカンバスに向かう、何かを描く筆。
完成品が並ぶ部屋。
塵のように転がる硬貨の山。
乱れたシーツの上に組敷いた、誰か。]
「忘れないで、クアトロ。
キミは、ボクを─────」
[嬌声が聞こえて、重なる。
消えた記憶の誰かと、昨夜のヒューと。]
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― 廊下 ―
[掃除道具を取りに向かう為、小走りに廊下を行く。 すれ違う姿が上位の者だったのならば、少しその速度も弛んだだろう。 ついでに、ぎこちない敬語で洗濯に出すものは無いかと問いかけでもしたか。
室内用の箒を取り、適当な場所に見当をつければ慎重に掃き始める。 長い柄が窓にぶつかってしまっては大変だからと、慎重に、慎重に。 一角が終わればゴミを塵取りにとり、また次の区画へ移る。 ゆっくりとだが着実に進んでいけば、“それ”は落ちているのだろうか。
くしゃりと丸められた、厚手の紙。 誰かのゴミかと思いながら、端にちらりとみえる彩度の高い色に興味を惹かれた。 丸まった端と端を持ち、軽く力を籠めて、広げて。]
………? ッ、 うわ、ぁ、 ッと、 ……あー……
[一瞬、そこに何が描かれていたのか、理解が出来ずにいた。 その拍子に手から離れた箒は、見事に庭に面する窓を叩き割る。 結構な音が響いたと、焦りながら落ちた破片に、手を伸ばして。]
(81) 2014/12/24(Wed) 22時頃
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……痛っ、
[鋭い切っ先が、指先に触れたのはほんの一瞬。 けれど、傷を作るには十分な時間。
始めは細い裂け目だったそこは、みるみるうちに血を溢れさせる。 ぷくりと膨らんだ血液の粒は、そのまま指を伝い、ぽたぽたと床に落ちた。
その様子を、呆気にとられたような表情で、見ていた。]
………痛、い、
[既に、いくつも傷があるから、すっかり忘れていた。 新しい傷なんて、久しく負っていなかったから。
傷の痛みとは、こんな痛みだったか。
口を半開きにしたまま、血を流す手と広げられた皺だらけの写真を、交互に眺めていた。*]
(82) 2014/12/24(Wed) 22時頃
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