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そうか、お前は...そういうモノ、か
[得心いったというように、坊主の声は低く嗤う]
─ 畦道 ─
[横笛を迎え撃たんとする錫杖の動きは大きく逸れ。
銀に煌く笛は光の帯を残して横殴りの一撃を打ち込んだ後、すい、と上へと優雅に抜ける。
一つ一つの動きは、舞のそれ。
何より身に馴染んでいるからこそ、次への繋ぎも自然と行われる。
上へと抜けた横笛を、その頂点でくるり、回転させて持ち替えて]
……っ!?
[打ち下ろそうとした動きは、低く嗤う声
そういうモノ、って……。
[上がる声に宿るのは、困惑の響き]
― 畦道 ―
[横薙ぎに打ち据えられた胴は、打たれた痛みではなく、光に薙がれた事を苦痛と感じ、坊主は錫杖を支えに、腹を押さえて後ずさる]
[追撃の笛を避けようとする動きでなかったのは、いくらか闇が押さえられていたからか]
煌煌として、闇を暴き、潜み眠るも赦さぬ、お前たち、は、そういうモノだ。
[低く低く、坊主の声は紡ぎ出す]
闇を厭うは、人の習い。
だが、知らずにおるなら、知るが良い。
暴くモノがあるから、闇は顕われるのよ。
― 畦道 ―
[じゃらん、と錫杖が音を立て、ごう、と火炎が螺旋を描く]
[火炎は田んぼの道具小屋や、畦に植えられた桑の木へと燃え移り、焔をあちこちで吹き上げる]
[そうして、焔にまぎれるように、じゃらんじゃらんと*錫杖の音は遠ざかる*]
─ 畦道 ─
[後ずさる動きを、追う事はなかった。
否、できなかった、というべきか]
……煌煌として、闇を暴く……。
暴くものがあるから、顕れ、る……?
[低く低く紡がれる言葉
その意を問おうとするのと、錫杖が鳴る
って、ちょっと、まっ……!
[上がる焔と、それが引き起こした事態に大声を上げ。
そこに流れてきた煙を吸い込んでしまい、その場で咳き込んだ]
あさがおの じゃまをするなら
あなたたちも ころしてあげる
【人】 落胤 明之進─ 畦道 ─ (16) 2014/02/17(Mon) 01時頃 |
【人】 落胤 明之進─ 畦道 ─ (24) 2014/02/17(Mon) 01時半頃 |
[雷門邸の前の通り。その地面を食い破るようにして一本の木が顔を出す。
瞬く間に老人を掬い上げて巨大化し、雷門邸の屋根ほど大きく成長した『大樹』の大きな枝の一つに、よっこらせ、といわんばかりの緩慢な動作で胡坐をかく]
―――あまり期待せんでおくれ。
[ここから撤退するであろう琥珀の身を隠すように、大きく揺れる大樹から無数の葉が*舞い落ちる*]
[表情のない顔で、紅に彩られた唇だけが動かせば。
日向の声に、手の動きに呼応するかの様に、女の真上から吹き降ろす風。
避けようにも間に合わない、ならば……。]
―――……っ!!!
[天に向けて力強く刀を振るうも、相殺しきれず。
女の体は風に煽られ、よろめいた。]
はっ……この程度で、さ……
止めれると、思わないで……っ。
[風が相手では、間合いが離れれば離れるほど不利でしかないだろうと考え。
女は、右手一本で刀を握ったままで駆け寄り、日向の右肩を狙おうと。]
[風は相手の姿勢を崩したが、倒すには至らない。
片手に刀を握る雪客が、まっすぐこちらへ向かってくる]
く……
[風の裂ける動きに刀の狙いが見え、しゃがむようにしてかわす。
しかし予想外に鋭い動きに、着物の肩が裂け、髪が一房宙に散らばった]
そう簡単には、いかないか。
[武器を持たぬ日向には、逆に刀の届く間合いは不利となる。
膝のばねで後方へ跳びつつ、左腕を胴を薙ぐように大きく振るう。
その動きに生み出された風は何倍にも増幅され、当たれば衝撃を感じる程の力を持った]
[振るった刀に伝わる手応えはほんのわずかで。
おまけに間合いもまた離され。
思わず、ち、と舌打ちし。]
【人】 落胤 明之進─ 畦道 ─ (44) 2014/02/17(Mon) 22時頃 |
[間合いを離されたままでは活路はなく、先の後ろへ飛ぶ様子を見れば恐らく身も軽そうで。
このままでは、直接攻撃を喰らわずとも消耗するだけだと。
強風が向かってくるのを感じながらも、避ける事はせず。
右手の刀を地にさして。]
来い。
そして……貫け。
[空に浮かぶは、幾つもの氷柱。
それらが日向目指して飛ぶと同時。
荒ぶ風の衝撃が全身を襲い、黒髪も、着物の裾も、狂ったようにはためいた。]
――――っク!!
[それでも、飛ばされまいと女はしっかり刀を握り締め、大地を踏みしめた。]
[後方へ大きく跳びつつも、雪客の刀を地に刺す動作
それの意味する所を知ったのは、着地した瞬間のこと。
空に幾つもの氷柱が、尖端をこちらへ向け浮かんでいた]
――乱せ!
[再び跳ぶは間に合わないと判断し、氷柱の軌道をずらすべく横向きの風を生む。
しかし鋭き尖端は、乱れた風をも易々と切り裂いた]
はっ……!
[せめて直撃は避けようと、地面を素早く横に転がる。
しかし右手右足が逃げ遅れ、幾つもの紅い筋が出来た]
痛ぁ……。
[顔を顰めるが、動きを止めていられる状況ではない。
そろそろという動きになりつつも、体を起こす。
今まで負ったことのない傷に、怯みそうになる気持ちを抑えるように、一つ大きく呼吸をした]
風吹かすだけじゃ……足りないか。
[強風を耐え切った雪客に向き直る]
そんなら――
[気を鎮めるように息をしつつ目を見開くと、その瞳に無数の風の帯が映る。
その一本を強く下に引く。
それは雪客の右手を風で打ち、刀を手放させることを狙ったもの*]
[風が吹き止んだあと。
紅が、日向の右手に、右足に流れるのを認め、ほんのわずか、女の口角が上がる。]
そんなんじゃ、止められないよ?
止める前に……死ぬだけ。
[地に刺した刀を抜き、日向へと近づこうとすれば、なにかを掴んで引くような仕草。
風を切るような音が聞こえた気がして、後ろへと飛び退ろうとするも、避けきれず。]
ッ――……!!
[したたかに打たれた手の甲、辛うじて刀を落とす事はしなかったけども、強い痛みにしばらくは早くは振るう事は出来ないだろう。]
ちく、しょ……っ!
[手を打ったそれを、掴んで、そのまま日向を引き寄せてしまおうと左手を伸ばし、空を握った*。]
──── …っ!!
[突如、生えた大樹に声を失う。
舞い落ちる葉が、視界を奪う。
それがこの場を離れる青年を逃がす為のものとは察せない。
己の心を逆撫でた故に、逃げた、と思いこみ。]
あなたなんか、きらい。
おじいさまのように、しんじゃえばいい。
[ざわり、身に纏う影が、蛇のように鎌首をもたげた。]
死ぬのは……嫌だな。
[右の手足に痛みと滲む熱を感じながら、呟く。
傷付くのも嫌だけど、傷付けるのだって本意ではない。
などというのは、我儘だろうか]
[風の力は狙い違わず、相手の刀の動きを鈍らせる打撃を与えた。
だが、相手に術を見破られたか、逆にこちらの右手が強く引かれる]
――――ッ!
[右半身が大きく伸び、傷口が一斉に開いた。
紅色が幾筋も伝い、痛みに息が詰まる。
それでも数歩を引き摺られながら、真っ白になりそうな思考をどうにか働かせ]
断ち切れ……!
[空いた左手を動かして、咄嗟に作り出したのは手刀の形。
それを自身と雪客の間を繋ぐ、風の帯に振り下ろす]
うぐっ
[帯を断っても姿勢を立て直すには至らず、日向はそのまま、無様ともいえる格好で俯せに倒れた]
[握った手に確かな感触。
しめたとばかり、強くそれを引き寄せるも、所詮は女の力。
数歩引き寄せたところで、振るわれた日向の手刀は、ふたりの間を繋ぐそれを断ち切って。]
わっ………!?
[引き寄せようとしていた女は、当然ながら後ろへと倒れ、したたかに背を打ち、右手の刀を取り落とした。]
は、は……。
痛ったい、なぁ……。
[顔を歪ませながら、手をついて立ち上がり。
刀を拾おうと手を伸ばす。]
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