194 花籠遊里
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おうや、おうや、イラッシャイ。
夜に潜む享楽の園、花籠遊里とは此処の事。 刹那の夢と、切なの蜜を、味わう為の暗い場所。
襤褸の花々の掻き集め。 屑の蝶々の羽休め。
現心に格子を見上げ。
(0) あんび 2014/09/23(Tue) 02時頃
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───さあさ、夢からオカエリなさい。
(1) あんび 2014/09/23(Tue) 02時頃
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/* おうや、おうや、お疲れサマ。
さあさお座敷。
お好きに喋ってくれて構わないよ。
(揺り籠ぎっこんばっこん)
/*
花が花にも、蝶が蝶とも。
咲き乱れてくれるのが、一番。
(揺り籠ギィコギィコ)
‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
(一度気付いてしまったならば、
知らない頃には戻れません。)
True love never grows old.
(本当の愛は、永遠に育ち続けるのです。)
朧さん。
お願い事をしても、よろしいでしょうか。
もしも、金色をした『蝶』が『櫻』を探しに来たなら。
約束を果たせずにごめんなさい、と。
『櫻』の季節は終わったのですと、お伝え願えますか?
[僕は特別な、櫻色のリボンを渡します。
どうかそれを渡してくださいと、告げて。]
[花籠での約束もまた、たった一夜の泡沫です。
『蝶』は移ろい、『花』は止める手立てを持ちません
そうだとしても僕は───…]
───僕は、『しあわせ』です。
どうか、あなたも『しあわせ』になってください。
お前の頼みを断る筈が無いだろ。
一語一句違わずに伝えると約束しよう。
[そっと櫻色を受け取ると一度席を立ちそれをしまう。
『花籠』での口約束など一つの泡。
時が過ぎれば、ぱちりと弾けて消えてしまう程の脆さではあるが。
それでも朧は『約束』を破る事は無かっただろう。
このくらいでしか、分けて貰った物の恩返しができなかったから。
そして最後に両手をついて礼の形を静かに取り口を開く。
……こうでもしないと、言いたい事は伝えられぬ気がしたから。]
世話になった。どうかお前の行く先に、幸多からんことを。
……元気でやれよ。
/*
丁は素直なんだか素直じゃないんだか。
私に抱かれたいならいつでも部屋においで?
誰よりも高く買ってあげるから。
(揺り籠ぎこぎこ**)
/*
丁助が逃げるのなら、追わなくちゃね?
まあ、私が帰るのを待っていなさい。
真っ白な服なんて着なくてもいい。
一糸纏わぬ姿でお待ち?
(ふふふふふっ**)
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― 宵闇の誘い ―
[櫻の枝が折れ。 まだ朧月は雲隠れ。 藤は風にしな垂れて。 魚は空へ泳ぐ頃。
――男は宵闇揺らし、一冊の本を捲る>>7]
下らない御伽噺だねえ。 こんな幸せ、あるとでも思うかい?
[慈悲もなく投げてよこす。 硬い表紙は地に伏せる。 焔燻る、花の足元へ。]
(38) あんび 2014/09/24(Wed) 22時頃
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丁。 私のことが怖いかい?
“丁” 早く此処から抜け出したいかい?
“ちょう” 私を置いて、飛んでなどいかないでおくれ。
(39) あんび 2014/09/24(Wed) 22時頃
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[男の唇は歪な弧。 三日月の如く美しくもなく、 さりとて醜いと詰る事も出来ぬ、 朝でも昼でも夜でもない、宵闇。]
お前に善い話をしてやろう。
稼ぎが欲しいのなら、私が買い付けてやる。 誰よりも高く、誰よりも高くね。
その代わり、私を満足させてごらん?
(40) あんび 2014/09/24(Wed) 22時頃
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…―――その身を繋ぐ鎖を 私が買ってやろうと言っているんだ。
さあお選び。
その本のような御伽噺を夢見て、蝶に抱かれ続けるか? 数度の地獄で、鎖を断ち切るか?
決めるのはお前だよ。
[男は揺り籠に揺れながら、嗤う*]
(41) あんび 2014/09/24(Wed) 22時頃
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お前も……しあわせに。
おうじとして今、感じているしあわせも本当のことだろうと思う。
けれど、今度は、花籠の外に生きる者として。
[きっとまた、別のしあわせを。]
――花主様、丁で遊んでくださいませ。
[御伽話を片手に。
天秤にかけた未来と悪夢。
顔を上げ。
いっとう艶めき微笑むのは、心を壊さぬよう仕舞い込んだ所為*]
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―ある、下らぬ物語のために―
[掻き集めた蝶の生まれも育ちも知らぬこと。 海を渡りてくる一通。 それは下らぬ物語のためのもの。]
フン。
―――反吐が出るねえ。
[あの男は意地でも迎えには来まい。 追いかけて来いと、逃げる蝶。]
(62) あんび 2014/09/25(Thu) 01時頃
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嗚呼。
人に成るとかだったか。
―――好きにするが善いさ。
[男には興味もない。
花でも蝶でもないのなら。]
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まあ。 隣国との“友好”でも築いておこうか。
恩を売るのは悪くない。
[適当な姓、適当な身分。 海さえ渡れれば十分だろうと。 手をつけた旅券を、櫻に持たせ**]
(63) あんび 2014/09/25(Thu) 01時頃
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おうや、おうや。 お前は嘘をつくのが下手だね。
それとも。 お前をそんなに見ていないとでも。
[男は愉快そうに揺り椅子を揺らす。 唄うように、されど冷たい視線ひとつ。 じっとりと絡みつくよな、吐息混ぜ。
笑みひとつですり抜けるを、赦しはしない>>59]
(73) あんび 2014/09/25(Thu) 03時頃
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はぐらかし、濁し、隠し、笑い。 丁のふりをし、蝶たらんとす。
焔のようにくゆる花よ。
[そっと、その髪に触れようか。 酷く甘く、酷く優しく。 酷く冷たい指先で。]
お前は一体、“何者”なんだろうねえ?
[蝶でもなく、丁でもなく。 花でもなく、人でもない。
“それ”をこの手に絡めとった。]
(74) あんび 2014/09/25(Thu) 03時頃
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―――お前だけを愛してやろう、“丁助”。
[艶めく顔に、返すは歪な笑みひとつ。
さあさ、焔とひとつ戯れようか。
御伽噺なぞ、始まる狂宴に燃やしてしまえ*]
―奥の部屋―
[一階奥の部屋にて、揺り椅子がゆらゆらと揺れる。
座っていながらにして、まるで見下す男の瞳。
焔を捕らえたのなら、微笑み告げよう。]
立ったまま。
自分で自分の雄を勃たせてごらん。
指を絡め、扱き。
[さあ、と動かすは顎ひとつ。
きぃきぃと揺り椅子が啼いている。]
蝶が花を買いにやってきても
善しと言うまで、自慰をお続け。
[まだ見ていてやろうと、足を組む。]
― 未来の話 ―
[冬も終わりに近づくある晴れた日、
鳥篭へと一通のファンレターが届く。
出版社経由ではないそれは、
シーリングに異国の文様を刻む異質なもの。
封を切れば、癖の強い文字が躍り、
彼の捕われた籠の中へ、何処か懐かしい香りを拡げた。]
Cher Belle ―――
突然の手紙をお赦しください。
貴方の著書を読み、筆を取らずにはいられませんでした。
貴方の書かれた物語は大変美しく、我が国でも老若男女がこぞって貴方の世界に恋をしています。不幸の末に結ばれる結末は万民の心に訴えるものがあったのでしょう。
けれど、私は貴書を拝読し、胸を高鳴らせる少女等とは別の思いを抱きました。
貴方にとっては取るに足らないものかと思いますが、何卒このまま読み進めてください。
風の噂で、この物語の結末は最初悲劇だったと聞きました。
悲劇を変えた筆はなにを想い、結末を足したのでしょうか。
幸福と言うのは私のような若輩者が語るものではありませんが、酷く多面的なものだと思っています。幸福な結末を迎えた物語の主人公は貴方から見て、幸せでしたか?
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