296 ゴールイン・フライデー
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公安部 カガは、メモを貼った。
2019/05/21(Tue) 10時頃
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[土曜日。
カーテンが揺らめくと同時に頁が捲れた。 花屋に向かうか悩んで結局やめてしまった。 昼に酒でも買うかと思いながらも 瞼を伏せれば思い出すのは昨日の事]
(5) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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[扉の前でため息をつく。 外まで漂う酒と料理の香りに足が竦みそうになった]
あー……と。席は、どこでも。
[意を決して踏み入れいれば別世界。 既に馴染みの客として定着しつつあるのに ぎこちない挨拶を繰り出した。
視線を彷徨わせる。 あの人はいただろうか。 余所見ばかりするから前方には気付かず うら若い女性と肩をぶつけてしまった]
(6) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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ああ、失礼。……怪我はない?
[咄嗟に抱きとめつつ支える。 ふと視線を移せば一冊小説が落ちていた。 手を離せば本を拾い彼女に差し出す。 その瞬間表紙を見て目を見開いた。
「もしかして、この小説お好きなんですか?」
女性は目敏く気づき目を輝かせた。 曖昧に頷いたのは自作の小説だった為。 此処で否定すれば良かったのだが 怠った結果女性は食いついてきた]
(7) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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[恋をする描写がいいだとか 仕草に対する文章が好みだとか 主人公の心情に共感出来るだとか。
痛々しいことに自分自身を映し出した小説を 褒められる事が羞恥を煽るものだとは想像だにせず。 耳まで赤くして困ってしまった。
それが端目から見て困ったように映るのか それとも照れたように映るのか それは分からないままではあったが 何とかいつもの定位置に移動する。
彼の視界のギリギリに入る場所に落ち着き ふと、頼んだのはいつものワインではなく]
(8) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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ベルベットハンマーがひとつ欲しい。
[今宵もあなたを想うなんて―― 今日も彼の真似をして頼むお揃いのディナー。 莫迦らしくてピッタリだと思えた]
(9) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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[偶然を装った必然に今は気付かないよう蓋をして もう少しこの夢のような時間を楽しんでいたい]
今日もあの人とお揃いがいいな。
[開き直ってしまって困ったように笑った。 未だに後の事など見据えられておらず 今も尚困ったな、どうしようと悩むも
ひとつだけ、先に選んでしまった]
マロングラッセなんてあると最高だけど ないだろうからティラミスへ。
[言葉の意味が彼に伝わればいいのに。 洋菓子店でもない癖にお願いしながらも またひとつ、ひとつ重ねてしまう。
食べ物や花に込めた思いが全部伝わればいいのに]
(10) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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[珍しく、真実を込めてまた覗き見た。 瞬きの瞬間にまたアルコールは揺れた。
結局その後瞼を伏せてしまったのは此方側。 居ても立っても居られなくなり、 席を立てば逃げるように会計を済ませた。
急ぎ足で立ち去った為に彼の様子は見れていない。 ただ、彼の傍らを通る時だけ緊張に耳が赤らんだが。 それも些細な事だろうと思いつつも思い返し また一つ自己嫌悪の波にさらわれるも 先延ばしにした答えにまた揺らいだ]**
(11) 2019/05/21(Tue) 21時頃
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[運命なんて莫迦らしい言葉を信じるか? ――少なくとも今までは信じていなかった。
左手薬指に指輪の形跡のないことに安堵して 女性の影がないことに安心して初めて自覚した。
胸を焼き焦がす程の情念を持っていたなど 未だに信じられない事実ではあるし
自分が自分ではないような前後不覚に陥らせる―― 指の先まで彼に支配されているような心地を 不思議と不快とは思えないからこそ救えなかった]
(48) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[あなたと過ごす勝手な晩餐がこんなにも心を苦しませる]
(49) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[目は口程に物を言う。 その言葉を教えてくれたのは誰だったか。 昔好いてくれていた女性だったように思う。 ”とても落ち着いて水面みたいな色をしてるのね” 告げた彼女の眸はこぼれ落ちそうなくらい熱を宿していた。
彼女の気持ちが分かるような時が訪れるとは思っていなかった。 出来るならば知らないままであれば幸福だったのかもしれない]
(50) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[金曜日。 最後のエンディングが決まらない小説。 ありったけの想いを綴った彼へのラブレター。 悩む時間だけはたっぷりあったものだから 整えた髪も決局くしゃりと崩してしまった。
例えば楽器でも引けたなら言葉にせずとも伝わる想いがあるだろうか。 ラジオの放送を見習って気障な台詞の一つでも言えたら違うだろうか。 行くか、行くまいか。木曜日の夜はいつも悩んでしまう。 それでも迎えた金曜日にもこうして揺れてしまっていた。
きっちりとした格好で食事を楽しむ彼は きちんとした職に就いているのだろうし 不定休かつ不定形な生活をしている自分とは釣り合わないし 彼の視界に紛れ込むことすらも烏滸がましいのではないかと 自己嫌悪がふつりふつりと浮かんでは沈んでしまう]
(51) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[それでも誰が何を言おうと会いたい気持ちに嘘はつけない。 いや、もう吐きたくないと思った。
気づいてほしくなんてないのは、嘘だ。 だが、嫌われてしまいたくないのは、本当だ。 願望と感情が導き出す答えは何もかも抑え込んで今を続けること。 そんな現状が辛く苦しいだなんて馬鹿げている。
まったくもってして恋は何故こんなにも心苦しく面倒なものなのに
女神様じゃなくてあなたに微笑まれたいのだと 神様であっても先約を取り付けて朝を共に迎えたいのだと。
99の嘘より1の本当が欲しくて堪らないのだと]
(52) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[叶わぬ願いだろうか。 振り向いて欲しいだなんて この想いをあなたに捧げることは あなたと夜を過ごしたいと望むよりやさしいものだろうに。
あなたと明日を迎えれば この心の渇きを癒せるだろうか。 今もあなたを想い、あなたのことを知りたいと願っている。 あなたに心を奪われてしまってからだ。 こんなにもあなたの心を奪いたいと望んでしまう。 覚えていいて欲しいと我儘になってしまう]
(53) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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[アフィニティをひとつ アメリカン・レモネードを添えて ウオッカ・ギブソンで雄弁に エルクソン・オウンはただの願望でしかないが どんな酒を贈ればその心は手に入るだろうか。
ブラック・ベルベットか ケーブルラム・ハイボール、 コペンハーゲンが一番正しいだろうけど]
グリーンアイズをひとつ。
[彼の眸と同じ色のカクテルを注文する。
意味とは正反対のものを選んだ理由は何故だろう]
(54) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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それからスコーピオンも。
[口端を上げては一人しかいない癖に 二人分の酒を頼んで口角を上げた。
遠回りすぎやしないかと思いながらも 臆病な自分にはそれで精一杯なのだから今日も夜を過ごす。 あなたを想いながら特別な金曜日を]**
(55) 2019/05/22(Wed) 17時半頃
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