308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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― コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[ストーブの中で、薪が爆ぜる音がする。 それに返事でもしたような呻き声が聞こえた。 床吸う耳は、硬いものを落としては引き摺る振動を拾う。
細身の男だった。ルパートより高く、シーシャより低い。 最初は、乱暴な客が来たのだと思った。 ベルを掻き消すくらい強く、ドアを開く音がしたからだ。
自身の足は、そういったものに対峙した際に弱い。 歩けない訳ではないが、逃げることに向いていないのだ。 だからどんな意見の相手>>2:72に対してだって、 否定から入ることはない。 争うことは、不得手だ。
腕を掴まれ、パソコンを巻き込んで放り投げられた。 全身を強く打ちつけたせいか、 痛みはあるのにどこか遠く感じる。]
(+0) 2020/10/23(Fri) 06時半頃
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[――間違い、だったのだろうか。
シーシャの説得に応じて街に帰っていれば、 ルパートと共にこの地を離れていれば、 食料を分けた誰かに伴って西へ向かっていれば、 あるいは、何もかも拒んで閉じこもってしまえば、 異なる未来に出会えていたかもしれない。
しかし、たぶん無理だ。 そんな曖昧な可能性では何度同じ場面に巡り合っても、 頑固な自分はきっと同じ選択をしてしまう。
慕ってくれる彼にも、 頼りにしていた隣人にも伝えた選択を繰り返す。]
(死ぬ時は、どこまでも広がる大地のそばがいい)
[瞼の裏に、トウモロコシ畑に揺れる赤毛が見える。 その上に太陽をそのまま形にしたような笑顔を描いた。]
(+1) 2020/10/23(Fri) 06時半頃
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だ、けど 、
[ボウルの中で丹念にすり潰したような声が出た。 最初の衝撃で起きた目眩がようやく落ち着いてきた。 それが叶ったのは相手の反応が遅かったおかげだ。 揺れる視界にその姿を収めると、 左腕がだらりと下がり、右足を引き摺っていた。
肩が外れたか、足を挫いたか。 あるいは筋肉自体がやられているのかもしれない。 来店した時には特に違和感を覚えなかったから、 きっとこちらを放った時に負傷したのだろう。
あまりにも、己の身体を鑑みていない動きだ。 身体に見合わぬ強い力はそのせいだろうか。 リミッターが外れているような、 理性が跡形もなく溶けたような、そんな印象を受けた。]
(+2) 2020/10/23(Fri) 06時半頃
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わたしは……べつに 、 しにたいわけ、じゃあ 、ない。
[死ぬために、喧騒から離れた訳じゃない。 死ぬために、周囲に甘えている訳でもない。
写真を上げるのは、それが生存証明になるからだ。 相槌のような印>>1:85は共感の意味合いも含まれる。
そんな風に写真を落とすばかりだったアカウントで、 昨日と今日多く文字を残した。 それだって、存在を確かめる作業に近いものだった。
世界中の誰かと、顔も知らない状態で言葉を交わす。 それは遠くとも近い、不思議な距離感だと思う。
これはルパートにだって打ち明けていないことだが、 要は、自ら残ることを選んでおきながら、 少しだけ心細かったのだ。]
(+3) 2020/10/23(Fri) 07時頃
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[周囲に視線を巡らせる。 パソコンは裏返しに開き切ったまま伏せっているし、 横たわる車椅子もロックがかかり完全に沈黙している。 薪ストーブへ向かっても、それより男の手の方が速い。
胸ポケットのスマホをドアの近くへ投げてみても、 呼びかけてみても何の意味もなかった。 男はなぜか他に興味を示さず、こちらへ近づいてくる。 相対し初めて、その目が酷く濁っていることを知った。]
ッハ、 これは……こまったな。
[何もなかった。何もできなかった。 何か、残せたら良かった。
まだ正常に動く男の右腕が、 じりじりと後ろへ下がっていた自身の左腕を捉える。
――ふ、と。 シーシャが食べた、あの厚いベーコンを思い出した。]*
(+4) 2020/10/23(Fri) 07時頃
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[はじめ、助かったと思った。 つぎに、もう助からないと思った。 最後は、せめて助けたいと思った。]
(+5) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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[何日たったんだろう? 日付の感覚なんてとうに失くしてしまった。
ただ、朝日が窓から差し込むから それは網膜を焼くほどに眩しいから また一日、経ったのだってことだけわかる。
だけど私の脳はどんどんふやけてくみたいに わかってたことがわかんなくなってってる。
たとえばこれ。 手にもってるこの、長方形の…板?
縁についてる突起を押すと表面が明るくなるけど これはなんのためのものなのか、わからない。]
(+6) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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― ??? ―
[空気の音が聞こえた。木を軋ませる、風の音だ。 鳴き声みたいなそれをきっかけに、意識が身体に宿る。]
……?
[瞼を持ち上げたつもりだったが、前が見えない。 まだ寝ぼけているのだろうか。 昨晩は何をしていたんだったか……そう、そうだ。]
……。
[緩慢な思考は混乱も動揺も許してはくれない。 ただ耳を澄まし、記憶に霞んでしまった呻き声を探る。
風の音、軋む音。 風の音、 軋む音。 小さな呼吸音。
何かが、いる。]
(+7) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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[お腹空いたな。 おかあさんのお味噌汁が飲みたい。
…おみそしる?
なんだっけ。]
(+8) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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[今度は失敗しないよう慎重に瞼を持ち上げたが、 一向に視界は晴れなかった。 原因を確かめるよう無意識に手を伸ばすと、 何者かに覚醒を気づかれたのだろう。 呼吸を捉えられなくなり、代わりに衣擦れの音がした。]
……あ゛、 あ。
[生きているのなら、逃げなくては。 思考よりもっと深い部分が警鐘を鳴らす。 荒くなったはずの呼吸は、淀んだ呻き声になった。]
あ……?
[その時。ミケ、と呼ばれた。動きが止まる。 最近じゃ皆に合わせてマスタと呼ぶようになっていたし、 同じ仕事に就いた時点で遠ざかっていた響きだ。
後退の為に床についた手を止める。 その指先は、眼球に触れてほんのり湿っていた。]
(+9) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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[左目に色素の薄い髪が映る。 日に翳せば透けるような色は、くすんでしまっていた。 けれど、それはきっと彼だけのせいではなく。]
しー、 しゃ。
[どうして君が、ここにいる。 濁った瞳の向こうに、いるはずのない命を見た。]*
(+10) 2020/10/23(Fri) 22時頃
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……いつ、 きた。
[昨日、と返答があった。]
いまは、
[日付だけを告げられる。 それを受けて考えるよりも先に4日と続いた。]
(+11) 2020/10/23(Fri) 22時半頃
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― 4日後・コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[壊れたドアを端材で無理矢理留めた場所から風が入る。 その度にささくれた木がきぃきぃと甲高く鳴いた。
どうしてここに――なんて。 答えの分かりきった質問はしない。]
……触れた?
[代わりに、たっぷり時間をかけて別の問いを投げた。 自身よりも大きく育った彼は壁際で膝を抱えている。 膝頭に額を押しつけてから乱暴に首を横に振った。 まるで水浴びをした後の犬のようだった。
そうだ。それでいい。 10フィート先からぐうるりと目玉を揺らして笑う。]
(+12) 2020/10/23(Fri) 22時半頃
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[思考も声も徐々に元通りへ近づいていったが、 本当にただ近づいただけだった。 安堵の吐息や笑い声には、まだ時折呻きが混じる。 その度シーシャは怯え、警戒するように身を固くした。
右目は相変わらず開いているのによく見えないままで、 左目もごく稀に持ち主の意思に反して巡る。 その時視界の端に映った左腕はずたずたになった どす黒い布地の向こう、生白い肌が歪に繋がって見えた。
まるで、死にたくない心に肉が応えたかのように。 応えてしまったかのように。]
(+13) 2020/10/23(Fri) 23時頃
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シーシャ、
[あの子はシーシャ。 元部下で、半月に一度物資を届けてくれて、 礼儀正しく、それでいて子どもっぽいところもある、 どこへだって行ける足を持った若者だ。 うんと小さい頃から知っている、可愛い子。
やめろ。“あたたかいもの”なんかじゃ、ない。
渇き張りつく喉を粘ついた体液で押し流し、口を開く。]
(+14) 2020/10/23(Fri) 23時頃
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出て行くか、殺すか。 好きな方を選びなさい。**
(+15) 2020/10/23(Fri) 23時頃
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