『……今から百年以上前。森の近くには薔薇が綺麗に咲く、お金持ちのお屋敷があった。
そこには美丈夫な跡取り息子と、平凡な使用人の娘がいて……経緯は置いといて二人は恋に落ちたんだ。
当然これは身分違いの許されない恋だった。
それでも、いつか二人が誰の邪魔もなく結ばれる日を夢みて隠れて愛を重ねたそうだよ。
だが、ある日とうとう当主に関係がばれてしまってね。
使用人の娘は屋敷を追い出されて、そのまま森の中に消えたのが最後、行方不明。
遺体も出なかったそうだ。……と、ここまでは、よくある悲恋話なんだが。
数年後、跡取り息子が見合い相手と結婚したその直後から屋敷には不幸が相次いだんだ。
まずは当主の急死、後を追うようにその妻。息子の妻も妊娠したのがわかった途端に子どもごと事故死した。
残された使用人と息子はあの娘の祟りだと怯えて、お祓いだのなんだの色々やったらしいが……駄目だった。
最後には原因不明の火事で屋敷は半壊。一家は滅びてしまった……というわけさ』
[ その後、ずっとほったらかしにされていた屋敷跡を叔父さんが買い取って改築したのが今の別荘なんだ、と克希が付け足す ]
(#2) 2011/05/16(Mon) 00時頃