[つまり、部屋の中には何もなく。
ベッドも、机も、椅子も、本棚も、壁のカレンダーやポスターですら、本棚の中の本に書かれた背表紙一つ一つくまなくもれなく一言一句違わず、進村 真墨の自室が再現されていたにもかかわらず。
それらはすべて、壁に描かれただけのペイントでしかなかった。]
なんだよ、これ………?
[到来したのは、戸惑い。次いで、虚無感。
何度周囲を見回しても、部屋の中には物体が何もなかった。]
(―――『中は、各々の「希望通り」になってるよ。
これもミーのイキな計らいってやつだね!』>>31)
[能天気な出目獅子の声が脳内で浮かんでは消える。
まるで人を小馬鹿にしたような部屋の内装に、真墨は―――]
ふ、ふふふ、くくくくくっ……!
[これが自分が望んでいた部屋という事実を、嗤うことを選んだ。
笑い声は、ひょっとすれば部屋の外にまで小さく漏れていたかもしれない。]
(318) 2014/03/16(Sun) 22時半頃