……――せんせい?
[からん、目前で鳴らされ音を消えさせた下駄の音>>272に学生は目をぱちくりとさせました。鼻孔を擽るのは最早パンの匂いでも何でも無く、葉巻の香が辺り一面に広がっては肺に入り込んで来る。学生は今はもう慣れてしまったその香に、しかし少しだけ眉を動かして見せました。嗅いだことのあるような――その香には、デジャヴの念さえ思い起こさせます。]
待ち合わせだから…、…花びら?
[学生はその視線を斜めに落としたかと思うと、次には視線をせんせいへと戻しました。まるで夢心地を思い出したかのようにぼうっとした視線は、せんせいの向こう側、猫との出逢いをうかうかと思い出し。その名残が頭についていると云うのなら、側頭部に手を伸ばし、そして取れなかったそれはせんせいの手に渡ってしまったことでしょう。はらり、そうして捨てられるか、手に残されるか、花弁を見つめては夢を懐かしみ現実をかなぐり捨てたい衝動に駆られるのです。]
(282) 2014/10/02(Thu) 10時頃