――自室→?――
[ 図書館があったはずだ、と幼い頃の記憶を辿りながら、足を進めていた。
初等部のころは課外学習だかで頻繁に通っていた、気がする。ただ中等部に入ってからは本らしい本など読まずに育ったし、資料で必要になるといっても大抵手近で揃うものだったから、わざわざ國立図書館まで出向く事は殆ど、無かった。
そもそも考えてみれば、そういったところへ出る暇もなかったわけだけれど。]
――……あー、これは。
[ まただ、と。せめて地図を見てから出るべきだった、と後悔しても遅い。通りの目星を付けるべく、緩く視線を辺りに散らせば。以前来た覚えがあるような、むしろ昨日来た覚えがあるような気もしている。
――立ち並ぶ店を凪いだ視界に拾いつつ、そういえば朝食すら摂ってこなかった気がする、と考えながら。
やがて>>261 マフラーに深く顔を沈めた少年が、黙々と足を進め通りかかるのに視線を止めた。すれ違い際、その背に首を傾げ声をかける。]
――ねえ、君。
[ 声に気付かれなければそれ以上は呼び止めず。気付かれたのなら、重ねて“今忙しい?”と少年へ尋ねかけただろう。]
(263) 2014/10/02(Thu) 05時半頃