― 回想:2年前・恋に落ちた日 ―
[賀東荘のロビーはいつも管理人である如月によって様々な花が生けられ、その時々によって色を変えるが、唯一同じ色を湛える場所がある。玄関を抜けた先、中央から少し逸れて風や日光が直接当たらないそこ>>114には、1年中冬が訪れていた。
入居当時からある絵画らしいが、残念ながら記憶にない。その存在を知ったのは2年前、視線の案内を受けてからだ。
熱のない瞳>>117だった。
ともすれば興味がないようにも思える。
それなのにどうしようもなく目が離せないのは、いつも己の世界に入り込む印象のある彼が、相手の世界に引き寄せられているように見えるからだろう。
真正面から見据えればまた感じることがあるのかもしれないが、それは叶えられない。
元より、己を定めてまっすぐ見つめられるのは苦手>>122>>142なのだ。]
(224) 2021/02/15(Mon) 18時半頃