[ 擡げた視界に映る僅かな動揺>>204 には、ただ緩い姿勢は変えずに歩み寄る。声に出さず首が振られるのには、小さくそう、とだけ頷いた。“じゃあ何でそんな顔してるの?”とは心中の疑問に留めたまま。顳かみ付近から伸びる黒角と、鳶色を交互に見やりながら。]
…ッ、……?
[ ――キャスケットが地面に音を立て、落ちる。
その間に伸ばした腕を掴まれるのには、寸暇呆気に取られながら。
取ったその手が震えていれば、咎める事も振り払う仕草も見せずただ従った。怯え切ったようなそれに、暗灰色は静かに、微かに――緩んでは。
――まるで獣に出会ったヒトみたいだな、と心中で喩えては、逆の立場になったような錯覚に陥る。
獣から見ればヒトは、皆同じ様に見えるんだろうかと揺れる思考のままに巡らせつつ。
……しゃがみ込むのには腕は取られたまま、友人を見下ろしていた。絡む鳶色は微かに揺らいでいたのだったか。
問いには応えず、ただ伏せられるそれを追う様に、自らもその場に腰を下ろす。*]
(205) 2014/10/08(Wed) 07時半頃