―『蘭』執務室のある建物前―
[突然の来客に『蘭』の部下達は内心はどうあれ、落ち着いた対応を見せる。曰く主は外出中であり、
いつ戻るのかわからないのでお引取り願いたい、と。
そんなやり取りが交わされるが、時期が悪かった。
留守を預かるカルヴィン少年が来訪者の名前を知ってしまったのだから]
ほぅ、御子息直々のお礼とは非常に喜ばしい。
しかも保護者不在とはなんたる…いやいや、改めて
お父上のお悔やみを彼に直接伝えたいのだが宜しいかね。いや、カルヴィン君にその旨を尋ねて欲しい。
それともママがいないと…
[その言葉を聞いていたのかどうか、すぐにムッとした表情を隠さぬ少年が老人一行の前に姿を現した。だが母親の教えを忠実になぞって礼儀を逸しない丁寧な挨拶を交わすと]
ご無沙汰しておりました、カルヴィン様。
この度は心より御父上の御冥福をお祈り申し上げます。
[嘘のない深い哀しみを込めたそんな挨拶を返せば、応接室に招かれるだろうか。武器の供出を部下が求めようとするならば一瞥して退けるのみ]
(195) 2010/03/20(Sat) 21時半頃