―― 図書室前・少し前 ――
[ はた、 と。 男は踏み出す前、足を幾許か留めた。
此処に住まう者の中では珍しく思う吸収口を着けた彼から、ちいさく――まるで独り言のように、呼ばれた名が白亜に響けば。 ……男は視線をそちらへ向け、口端を上げた。]
ああ、…―こんにちは
[ さて、今の時間は何時だったか。男は首を傾げて髪さえ揺らした。 顔前に垂れたそれは邪魔臭く、思わずに怠く後ろへ避ける。
そうして男は考えた。男が見るとき殆どプールに泳いでいる彼が、まさか――いやまさか、図書室にでも行くつもりなのだろうか?
ギャップさえ彷彿とさせるその” 想像 ”に、男は腹底が擽られる思いがした。 その想像の渦中の彼が、二度と。 ――そう、” 二度と ”プールには行けないと、思って居るなど知らずに。知る手段さえ、ない。 ]
これから秘密…第二棟に。――あなたは図書室へ?
[ 問われたこと>>181に、男は何を思うでも無く軽く返した。
「 そういえば、宿題は。 」と、思考を止めたことには、男は口元に手を当てがい考える。 よもやその為に、と。
…いやはや、それもそれで律儀なことである。男は声にするのをやめて彼の姿を爪先までじとりと見つめた
(192) 2015/07/13(Mon) 21時半頃