[店内は、そこそこに賑やかで、そこそこに落ち着いている。なにやら、ペンが宙を飛んだり、楽譜が撒き散らされたりもしたようだが、男は与り知らぬまま。]
次はそうだな、氷の十字星のウォトカをワンショット。新酒があるなら、それがいい。
[そのウォトカは、毒こそ無いものの、新しければ新しい程酒精が強く、氷の星をそのまま飲み込むように内腑を冷やすと評判だ。注文通りに置かれたショットグラスを男は指先で持ち上げると、すっと店内に視線を流した。]
鳳凰の実?...仕入れるには少し早いか。
[目についた赤い花に>>172ぼそり、と落とした呟きは誰かに聞こえたかどうか。
傍に居た兎人と目が合えば、殊更にこやかに、グラスを掲げてみせたりもする。]
悪くない...
[くい、と、ショットグラスを空けて、凍りついた白い吐息と共に、満足気に口にするのは、前と同じ台詞。*]
(182) 2022/08/08(Mon) 01時頃