[少し息を、吸って、吐いて。]
……まどかさんね、高校に行ってないんです。
[まかの学歴が良いとは言い難いことは、まゆ美なら知っているだろうけど、ちゃんとした普通の高校に行っていない理由までは、話さなかった。]
いえ、正確には、バイトしながら通信高校行って。
高卒はとったんですけど……大学なんて夢のまた夢。
あんまり評判の良くない会社に就職しました。
どこでも良かったんです。……生きていけるのなら。
狭くて小汚い庶務課に配属されて―――、 それから、……。
[そこで、言葉に詰まってしまう。
このことを本当に話すべきか、悩んでしまって。
だけど中途半端に話を止めるべきではない、
全部を見せたいと、そう思った相手だから。]
……おえらいさんの、愛人になったんです。
[仕切りの鉄に引っ掛けた指先が、錆びを軽く引っ掻いた*]
(182) 2015/12/18(Fri) 16時頃