『―――………そうか』
[スマートフォンを持つ手がこわばる。指先が白くなるほど力が籠った。手を滑らせて、落としてしまいそうだ。
心臓が掴まれたように苦しい。
いやだ、いやだと心が訴えている。
息苦しい――聞きたくない。
けれど聞かねば。しきたりだ。
――Heroine因子。パイーパティ王家はそれの概要を知っている。運命を巻き込んでしまう力。運命を揺さぶることの出来る可能性。そしてHeroine因子消失の切っ掛け。ヤニクもそれを把握しながら日本に来ている。
王子の十歳の占いが出た後。異例中の異例であるその漠然とした占いの結果と、日本という地名に、王族皆はHeroine因子によるものではないかと危惧した。
年に二度も占い直しが行われ、王子の花嫁占いが行われたのは計十四回。
巫女を変え、精霊を変え、それでも全ての結果が『さくら』という不確定の誰かを指し示した。]
『……占い直しということだな。』
(179) gekonra 2018/04/07(Sat) 09時頃