― 翌日・どこかの休み時間 / 2年教室 ―
[全校集会の後、休み時間。
許宮ニコラス瑛二は白鳥ヨーランダのクラスに乗り込んでいた。
ノックをするでも断りを入れるでもなく、普通に扉を開けてさも当然という顔で入ってきた3年生(しかも校内では変人で有名な男だ)は呆気にとられる生徒達の間をスタスタと抜けて、まっすぐヨーランダのところにやってきた。
驚いた表情を浮かべる彼女に構わず、その前に立つ。抑えきれない興奮故か、いつもより数段キラキラしいオーラを放っている。]
白鳥ヨーランダ!
昨日は名乗りもせず、失敬したね。
何と言ったらいいのか……そう。一度頭を整理したくて。
ぼくは許宮ニコラス瑛二。美術部の部長をしている。
ぼくには描きたい絵があった。これまで何枚も同じ画題で描いた。納得いくものはずっと描けなかったけど……
[薄紫の瞳を伏せて、長い睫毛の影が落ちる。]
――だけど昨日、君の歌声を聴いて確信したんだ。
[かっと目を開くとヨーランダの手を両手で掴み、自らの胸に引き寄せた。薄い色の双眸でじっと顔を覗き込むと、甘やかなピアノのメロディが流れ始める――]
(171) 2020/01/13(Mon) 14時半頃