――そして――
[ぴしっ みしり きし がりり]
[侵食する水晶。今度はどこへ? 彼自身には、なんとなく分かっていたのだけれど。不規則に自らを侵すそいつが、最後に求めるのはどこかということぐらい。
瞼の裏に見えるのは、やっぱり淡紫の小さな花。それは、こっちに置いていきたいんだけどね。すくめようとした肩はもう動かない。音すらも、霞む。頭の痛みは増すばかりなのに、体の痛みはどんどんどんどん消えていく。
でもそんなこと、どうでもよくて。
彼は、探していた。]
[俺の中にあるはずの、それを。最期まで結局、独りよがりだったな。ふっともらした息。それでも、何か残せただろうか。なにか…………与えられたと、いうのだろうか。]
[そして。“心”に潜り込んだ水晶が、煌めいたその時に。口角を、少しだけあげた。]
(169) hamy 2015/06/19(Fri) 00時半頃