[ 第一棟 廊下 ]
[ 庭から廊下に上がると、全身覆われた獣人の彼を見つけた。>>132
どこかへ行く途中なのだろうか?
去って行く姿を見届けながら、彼の口元に充てがわれた吸収缶は、僕のこれと同じなのだろうか、と―――そんなくだらないことを考えて、切り捨てた。多くのことを、考えてはいけない。
…しかし>>129先程、僕から見ると苦しそうに噎せていたけど、何だったのだろう。
僕は硝子戸の隙間から手を伸ばして、紫陽花の花を手のひらに捕まえた。捕まえたら、握り締めた。
ぱらりぱらりと、こわれた花弁が床に零れる。ため息だか、諦念だかの息がこぼれる。
匂いはやっぱり、しなかった。 ]
[ そうしてのそのそと足を運ばせた先は、第一棟の廊下。第二棟とを繋ぐここの電球は、切れているのだろうか?――少しだけ薄暗いそこは、妙に居心地良かった。 ]*
(160) 2015/07/10(Fri) 00時頃