――回想・第1棟広間――
……ああ。…先生
[ 掛けられたお礼>>136にはたと意識が動いては、触れかけた手を下ろす。普段通りのあまいにおいが排気口をすり抜けて入り込めば、目の前の相手をようやく管理者と認識した。
名前は知りえなかったが、区別をこめて敬称を呼べば、相手も自らの立場に気付くことはあったろうか。
――また、ひとを傷つけて、秘密棟へ度々送られる“観察対称”であることも。]
――心配? 俺、
[ 頓着もなければ、素直に“おいしそうだったから”と零すものの。
ガスマスクでくぐもった声は相手に届かなかったかもしれない。……やがて溢れる「アマル先生」の名前には、面体の下顔を歪める。外聞ですらその“実験”は獣人の身には気持ちのいいものでなく。
先ほど庭園で見かけた姿がそれとも知らず、ここに来る、と予期されたなら僅かに後退りすら。]
(157) 2015/07/10(Fri) 00時頃