[今や黒は大きくこじ開けられ、閉じた筈の蛹はぱっくりと口を開けている。娘を弾き飛ばさんとうねる黒は、やはり外壁と同じように娘に砕かれ、内包した力ごと消えて行くのがよく分かった。
深い黒≪茨≫の中心で、女は唇を噛む。]
なんて、しぶとい――!
なんて、忌々しい――!
[叫ぶ声には焦りが混じる。屠った筈の自分の天敵。それが、こんな最終段階になって姿を現すとは!
あらゆる力の可能性を食らい内包し、それでも彼の一族は恐ろしい。
だが勝てぬ訳ではない。
手負いの相手を屠るには、今一度、ほんの少し手を加えるだけでいいだろう。
振るう片腕はそのシルエットを崩し、先ヤーニクにしたのと同じように、もう一度、星の死病《モール・ガルガンチュア》を。
流星雨を降らす娘に同じだけ青≪花弁の刃≫を浴びせれば、その身を覆う包帯は徐々に散って行っただろうか。]
(156) 2015/06/03(Wed) 23時半頃