[チクタクチクタク。
男の口元をサボテンが覆っている間の沈黙>>145>>146。
聞こえるのはバイクのエンジンと、何故か忙しない…の心臓の音のみ。
「謝らなくてもいいの。
だって私がやったんだもの。
謝るのは此方の方だわ。
ごめんあそばせ。」
考えてみれば実に大人げないではないか。非があるのは此方の方なのに謝りもしないなんて……過去にも言われた事がある。
素直じゃないのはお前の悪い所だ、って。
さぁ、言うのよ。簡単だわ。たったの五文字だもの。
さぁ、口を開いて––––––––閉じた。
男の口調は明らかに、此方の失言に気がついている。
ああ申し訳なさそうに下げられた眉さえ、涼しげな瞳さえ態とらしく見える。
自分の失言に。仕事中遊んでしまった幼稚さに。目の前の男の遠回しな物言いに。
頬と云う水面に紅い雫がみるみる広がる。引き結んだ唇が僅かに震えた。]
(155) 2014/10/01(Wed) 21時半頃