――回想・→食堂奥――
[ 手が重なっていたなら、彼からか己からか、いずれ一間で離されたのだったか。
ぬれたそれを予備へと着替えては。すり切れてきたな、と鮫肌に触れる手袋を眺める。破けそうに薄まった部分を見つめて、小さく嘆息をしつつ。
―――足を並べ着いた先、ひと目を避けて、食堂の奥手。
いつもどおり、“どうぶつ”に必要な栄養と、甘い味の詰まったチューブを数個受け取っては。
決まった動作で吸水口に突っ込みつつ。手早く空腹をごまかすとなり、亀の彼も“ご飯”をしていたろうか。*]
…、…チェビィ、は、どんな景色がみたい?
[ ――何でも。には、たとえば“しんかい”ってなんだとか。そこからそらはみえるかだとか。はたまた、どうやればそとに出られるといった疑問も、山と浮かんだが。
吸収口から落ちたのは、先ほど、自分に一間もとめた奥。彼のかわきの奥への、興味だった。もし彼がこがれる景色があるなら、しりたいと。――問いには、どう返されただろう。
こたえにいくつか言葉を交わし。やがて、何事もなければその場に別れながら。]
(155) 2015/07/13(Mon) 08時半頃