……クソ、
[負った傷を丹念に隠して、宝物みたいに抱きかかえた。あの時握りしめ>>109、気づかない内に彼の視界に納められた拳で、戸の縁にしがみついた。額を押しつけ、獣のように背を丸めた。噛み締めた奥歯が、頭の中でギチギチと嫌な音を立てる。
己の言葉が彼になんの影響を及ぼさないことを幸福だと思う。己の行動が彼になんの傷もつけられないことをもどかしく思う。この矛盾した感情は、彼を想う限り永遠に心に巣食う恋だ。
歓喜と苦渋の入り混じった悲鳴が、吐息と共に溢れた。
最奥の部屋に消えた彼>>139には聞こえなかっただろうが、思うより近くで身を折る誰か>>90には届いてしまったかもしれない。
視界は狭く、夜は深くとも。帰路はなく、視界伏して。]
……なに、してんの。
[誰もが息を潜める真夜中、甘い一日の切れ端に、小波のような呼吸がひとつ重なった。]*
(148) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 19時頃