[10年ぶりに取り戻した涙は、フィリップを心配させてしまうだろうか。
胸のうちを過ぎったそんな微かな懸念は、瞼に降りてきたくちづけ>>136に拭われていった。
翼に伸びてきた手。その意味に気づけば、望まれるまま、翼の中に閉じ込めてしまう。
自分の中に、独占欲が存在していることを、思い知る]
嬉しいわ。
[モノクロの私のことを、フィリップは綺麗だと言ってくれる。誰に言われるよりも、嬉しいと、そう返そうとしたけれど、林檎の味のする二度目のキスに、その声は封じられてしまったかもしれない。
額をくっつけあって、熱い吐息を零して。
そして私は、肝心なことを伝えていなかったことに気づく。
触れてもいいかと聞かれた時は、曖昧な言葉で誤魔化してしまったけれど、これは誤魔化してはいけないことだ。
どんなに恥ずかしいと思っても、きちんと伝えておかなければならないことだ。
だから私は精一杯笑顔らしきものを浮かべて]
フィリップ。
[誰よりも側にいる人の名を呼んで]
(141) 2015/07/13(Mon) 02時頃