…キミ、そういう面もあるんだね。
[振り向き様に魅せられた笑みは、何とも言えず。
幼稚だと鼻で嗤う者も居るだろうか――然しその奥、笑みの裏。
妖艶に色香を流すその姿が視えたなら。笑う飛ばすことなど出来やしない。
してやられた、とばかりに咽を鳴らし、それでも蝶の誇りを保つ様に減らず口を叩く。
…―其の言葉が花に届いたかは、定かでは無い。
向けられた花頭にタオルを被せたなら、その上からゆうるり撫でる様に水気を吸い込ませ。
花が独りでに唄う詞が鼓膜を柔らかに触れるのを感じ得ながら、その言葉をパズルの様に組み合わせる。
無言。
ただ花が紡ぐ唄声が、嬌声やら響いてるだろう、地下牢の雰囲気を拒絶し。
まるでここだけ隔離されたかの様な錯覚さえ覚える。
花と蝶。
鉢と籠。
囚われる場所さえ違うけれど、囚われた刹那に始まる取り巻く夢想。醒めることを望まれない幻夢。
こくりと。また一つ咽喉が俄かに大きく鳴ったのは。
――互いを人とする唄>>132が耳を擦り抜けた為か。]
(137) 2014/09/18(Thu) 21時頃