[床を突き破って伸びた蔦が、銀糸の髪の男に襲いかかる。
それは控えさせていた魔物のもの。
数本は鎌で切られたが、残る蔦が毒を吐き、一瞬動きを止めたヴェスパタインの身体にきつく絡まって拘束した。
動きを封じられた手練れの男の懐に飛び込み、腹に右腕を貫通させる。
肉が裂かれ、骨が軋む音。
ヴェスパタインの白い顔が苦痛に歪んだ。
―彼の身体に生えたイアンの右腕は、針のような毛で覆われていた。]
あんたは『任務だから』、魔物を排除しようと俺達を集めたんだろ。
俺やヴェラさんの事も信用ならないって思ったから此処に身を寄せた。
その判断は半分正解で、半分ハズレだ。
[その声はいつものような口調でありながら、氷のように冷たい。
そして緩く首を傾げながら問いかける。]
―なぁ、覚えてる?
あんたと二人で向かった任務だ。
二年前のあの魔物…俺の弟だったんだよ。
(136) 2013/06/14(Fri) 23時半頃