[紅爪《ブラッド・ザック》が貫いた瞬間。その輝く魂を吸い上げて、無数の蛾≪パピヨン≫が弾けた。
その鱗粉は至近距離の≪赤≫の肺を黒で満たす。
表皮であればじわりじわりと命を蝕むその毒は、蝕むのは内臓の奥深くから。
そう、星の死病である。
《モール・ガルガンチュア》
だが彼にとっては即死の毒では無い。
その御業の内が一つで対処可能ではあるものの、力を削るには十分すぎる物であった。
貫いた筈の女の姿は無数の蛾となりそのシルエットを崩して、高く上空を越え、小高い丘の上へその黒い姿を再度形成する。
とっくの昔に皆舞台の上。
演目に組み込まれ、台本も揃っている。
舞台挨拶も済んで、足取りは軽やかに。決められた台本通りに物語を運び続ける。
そして女も舞台の上。
彼女も役者の一人として、
この舞台装置の一部として、]
(135) 2015/06/03(Wed) 22時頃