ひとの血のにおい。
[ 惹きつけられるように、意識が動いた。微かな匂いの元を辿るよう、足がひたと冷たい床を叩く。
庭園内で競り合う>>104少女と>>121女医の姿に顔を向けるものの、ただでさえひと気のあるそこへ野次馬心を動かす気もなく。あれだけの騒ぎを起こしたなら、と小さな体を僅かに、余計なお世話を込めて見送るのみに留める。
途中、>>114ぽつりと落ちた声の主とすれ違えば、その背にある翼に興味と、また憧憬ににた視線を揺らしつつ。
しかしそれも一瞬のことであれば、彼女の意識が庭園に向かう間に廊下を歩み進んだだろう。
――果たして、足は広間に立つ相手に追いついたのだったか。もし歩みが届いたなら、硬い合成繊維の手袋で覆われたそこを彼>>113へ伸ばしただろう。
気配に気付かれないままなら、背後からその体に触れかける事すらあったかもしれない。
もしその姿がすでに他へと去っていれば、やがては諦め、辿り着いた第1棟内で進みを改めただろうが。]
(132) 2015/07/09(Thu) 23時頃