[結局使っても意味は無かったか。と笑う顔は、女ものの化粧品を転がして。鞄を片手に男は、嫌に目立つシルクハットと礼服の上着を個室にと脱ぎ捨てた。]
はぁ、どうするか。
[最初から、あの獣を追いかけるという選択肢はない。悪意と憎悪、混沌に塗れた世界など興味の欠片もなく。紳士然とした顔を捨てれば其処にあるのは、善意の塊もない、顔だ。
獣を追いかけ、誰かが犠牲になろうと知った事ではない。今は、良いが列車が動き出し。駅に着けば、化けものを調べる為に鉄道警察が本格的に介入してくる可能性が高い。
そうなれば危ないのは、自分の身だ。
こんなところでドジを踏む訳にはいかない。
いかないが、胸を刺す痛みはどうすることも出来ず。]
お人よしどもめ。
[悪態をつくことで。心を静めた。
妹に似たあの少女はどうしたか、外に出るなどということは、異国の紳士が止めてくれるだろうと思って居た。>>115>>122他力本願というらしいが。
自分の身が、危うくなる可能性が高いのだから。
これ以上は何も出来ない。
窓を開け。――、そこから車内より抜け出すだろう。**]
(130) 2015/12/02(Wed) 23時半頃