[一度止めた足を再び動かす事はなく、傍観じみて、相手の反応を待った。
待つ時間ってのは、いつだってばかみたいに長く感じる。
漸くといっていいほどの間の後、振り返った顔には、無意識のうちに眉根をわずかに寄せた。]
まだ寝れるわけじゃない。
[治療が進んでるなんていったって、眠れもしないのにベッドにただ転がってるなんて拷問に近い。言外にそう含んで言葉を返したけど。
それでも扉の開く音を響かせて、室内へ消えゆく背中には、小さく溜息を吐き出す。
苛立ちとか、呆れとか、そんなのよりはどちらかといえば、諦めに近い。
突っ立ったままになっていた足を踏み出して、残った階段を下りきると、廊下を僅かな距離だけ進んで、相手が入っていった部屋の前に立つ。
歩むペースは緩慢なもんで、到達するまでには、幾らか時間を要したかもしれない。]
…、"可哀想"じゃなくなった俺は、もういらない?
[閉じられもせず、開け放たれたままの扉。
それを潜って中には入らないまま。
緩く首を傾げて、そう問い掛けた。]
(123) frigidity 2014/07/09(Wed) 20時半頃