― 至る客席 ―
おやおや、少し遅れて来てみれば……―――
[ルーカスは傍に人影を従えて、やや遅れて客席へと辿り着いた。
その人影が誰かは、少なくとも分娩台のようなものに寝かされ、頭が下になっていれば、見えないだろう。
灰青が見遣る舞台上には、先程まで動くの見えなかった、ヴェスパタインの姿。その彼の様に、No.2やNo.4の姿に、綺麗に手入れされた片方の眉が上がった。しかしながら、唇は優雅な弧を描いてやまない。
ちらりと、No.1、No.7……No.8にも視線を向け、その各々に行われているものを止めるでもなく、身を客席の椅子に沈める。]
―――…?
[ルーカスの傍に在った人影は、椅子の影に隠れるよう、男の足元に直接床に腰を降ろさせている。それに何事か囁きかけ、灰青の持ち主は。やはり唇の端を持ち上げて微笑んだ。]
(122) 2010/04/08(Thu) 22時頃