[二等車両の廊下を、大きな荷物でよたよたと歩いて行けば、向かいからやってきたのは、>>109貴公子然とした、整った身なりの男性。
その口から語らずとも、一等車両の住人だということは、その身なりや仕草からも、容易に察することができる。
仕事か、はたまたバカンスか。どちらにしたって、忙しない自分とは違ってたいそう優雅な旅になるんだろう。
そこまで考えて、自分がすっかり道を塞いでいることに気がついた。
すみません、と声に出そうとしても、切符を口に咥えているものだから、もがもがと呻くことしかできない。
慌てて元来た道を引き返そうと、後ろへ下がろうとしたその時、>>111>>112開いた扉から、少女がひょこりと顔を覗かせた。
此方を見るなり呟いた「鳩の人」との言葉に、咄嗟にふぁ、と口を開けば、咥えていた切符がひらり、床へと舞い落ちる。
急いでいたのでちっとも気がつかなかったが、どうやらこの鳩は随分と目立つようで、噂にでもなっていたらしい!]
(122) 2015/11/28(Sat) 21時頃