―雨降る森の中で―
[はっ、はっ。はっ、はっ。
荒い息を吐きながら、狼は雨に沈んだ足跡の臭いを辿って駆ける。
念のため、『ただの狼』>>57を一段階超えて。
すなわち、二足であれ四足であれ、ほとんどの動物を上回るスピードで。
やがて、雨の線にブラインドされた奥で、先を急ぐ魔法使いの姿>>111を視界にとらえた。
なるほど。あいつなら、話が早そうでいい。
ポンチョを羽織った後ろ姿であれ、臭いが濃ゆまれば判別はつく。
ヴェラにとってはコリーンと同じ>>16、幾度か要請を共にした相手だ。
狼が自分であるとは分かってもらえることだろう。
わざとじゃなければ、魔物と間違えて攻撃されることもないだろう。
直前で速度を緩め……バウッ!! と、後ろ足で飛び上がる。
腹か胸辺りを狙った、前足二本での軽い犬パンチ。
雨の中を駆けてきたびしょびしょの前足ゆえに、「よう!」を表現したこの挨拶は、かわされてしまったかもしれないけれど]
(114) 2013/06/11(Tue) 19時半頃