― 朧の間 ―
[逸らした視線の先、黒く眠るモニターに押し黙る青年>>105の姿がぼんやり映る。その表情は読めないが、沈黙が望む答えを与えられなかったことくらいは分かった。
どれだけ近寄っても、朧を掴む>>79ことなどできはしない。むしろ触れる距離にいるからこそ、指の股から零れ落ちていく様をまじまじと目にしてしまうのかもしれない。
嗜めるような声>>106をあしらいつつ、もし微かでも彼の不満を感じ取ることができたなら、男の指先は震えていた。外気に冷えきった風を装い、拳を握りしめる。
己が、彼を揺らす理由になった。
それは忌避すべきことだ。
数日前、彼の視線を唯一から奪ってしまった時>>1:226と同じ。その役目は自分であってはならない。
そう思うのに、どうしようもなく歓喜に震える心がある。
恋と相反する欲が全身を巡って、治りかけの喉を張りつかせた。生唾が咽頭を過ぎ、胃の中でぐちゃぐちゃに入り混じる。
言葉>>94が口からまろび出たのはその後だ。]
(109) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 06時半頃