[櫻子が体重を感じさせない動きで一歩ヤニクに近づいた。>>@27
ヤニクの体はくたくただった。現在(混迷した状況のなか)出来るだけ陽気に振舞ってはいるが、ほんの数時間眠った程度で回復するような力の使い方はしていない。なにせ死にかけの思い人一人を助けたくて全身全霊をかけたのだ。
だからこれは――朧に鼓舞されての強がり。
ここにある元気は強がりで捻出した嘘。虚勢だ。
それを見透かされて、恥じらいよりも救いを感じた。
見つめる櫻子の大きなまるい目を覗き込む。
……ずっと見ていたい。そう思うのに、彼女の姿を桜吹雪が隠してしまった。
薄ピンク色に視界を覆われて、次の瞬間――体が軽くなっていた。拳をつくることさえ力が入りにくいと感じる体のだるさが、体を覆う寒気が、頭の割れそうな頭痛が軽くなっていた。]
…… アリガトウ。
かなり調子よくなりマシタ。
さくらこさんは、体、大丈夫デスカ?
[ヤニクははにかんで目を細めた。体の芯がぽかぽかと温かかった。]
悲しい顔ナド。
アナタに会うだけで、ワタシは嬉しい顔になれマスヨ。
(109) 2018/04/03(Tue) 23時半頃