[古ぼけた記憶の端を苦々しい思いで取り出して、勘違いであれよと願う——しかし、用心にこしたことは無い。
シビルは足を踏み出して、通りに背を向けるようにしつつ少年に話しかけることにした。]
…………チャールズ、あちらで大道芸がやっているぞ。
[遠い昔に異国に渡った知人の名を少年にあてがって、適当に呼ぶ。
彼の背を押すようにして歩かせながら、大道芸の華やかな盛り上がりのある方へと向かった。
――通りの向こうの人物が、もし想像通りの人間ならば、早く距離を置きたいという思いだけで。
駅前で見せ物を覗き込もうとする人の群れに合流しようと歩きながら、少年にちらりと見下ろすと、彼に届くか届かないかの囁きを。]
…… …… …… ……。
[「少々、つきあってくれ」
――もしもこの少年が、利用されることへ不安か憤慨を抱き、騒ぎ立てるならば……
……つまりそれが神のご意志ということだ。]
(97) 2015/11/30(Mon) 21時頃