いいねぇ、人間らしくなってきたじゃねぇの。藤の字よ。
[偽りを隠しきれぬ彼の瞳にニィと撓める瞳。>>75
彼の持つ鏡を砕きたがるは己の悪癖なれど、省みた事は無い。
今も指の接触に肩を揺らす彼を抱寄せ、更なる鏡内を求めた。
そうして、跪台より花薄雪の香油を掬う。
甘たるい香で彼らを惑わさず、爽やかで何処か冷たい――――さながら現の香りを撒いて、夢にさせぬ算段。
彼の告げるお決まりの文句を聞き流し、真に取り繕わず零れる嬌声を求めて、片手で器用に小瓶を開いた。
悪辣な言葉を次々掛ける癖、扱う様は“生娘”にするが如く。]
良い、献身だ。―――そんなに親鳥の振りが楽しいかい。
[どろりと広い掌に香油を零し、濡れた指先を再び忍び込ませれば、つぷ、と彼の窄まりに宛がった。
先ずは正円を描いて、花を開く様子を奉仕する朋にも教え、彼の腰が揺れれば、蛇行を伴い節の目立つ指が狭隘を穿つ。太い指が異物感を齎し、緩く鉤型に曲げて探る内側の感触。]
――…啼けよ、藤の字。
[鎖骨に触れてくる手首へと接吻を捺して囁いた。]
(81) 2014/09/15(Mon) 01時半頃