…あの後、一夜にしてこうなった。――って信じる?
[軽い口調は続く。]
俺は、…半信半疑。今でもね。
[ぎこちなくも笑いながら、暗灰色が移ろうのに気づけば、少しだけ瞳を曇らせる。
次に来そうな問いぐらいは流石に予想がつく。人の、獣の間で流れていた他愛ない話に、唇を傷めずに済みそうな答えを、頭は自ずと探し始めた。]
――俺を飼ってくれる人にしか、触らせない。
[ついでに、"く、"と喉奥を小さく鳴らして。
マフラーへと鼻先を埋め、密やかに息を落とした。非現実染みた響きは、はぐらかされた"それ"にも少し、似ている気がする。
……そうして、相手が立ち上がる気配に、再び顔を持ち上げ、鳶色に白と金を映す。
顔を洗いたい気持ちを抑えつつ。その手を優しく握り返しては、蹄を立て、自分の足だけで立ち上がった。
そうして、ゆるりと顔を向けた先は図書館だったか。確認するかのように目配せ――困ったように目尻を下げては、握ったままの手を少しだけ、緩めた。]
(80) 2014/10/09(Thu) 23時頃