……っな、んですか、それ。
[顔を隠そうにも、そのための眼鏡は外されて相手の手の内にある。
こちらを伺うように向けられた視線からは、咄嗟に顔を背けようとして。けれど彼らしくもなく緩んだ表情に気付けば、唇を噛んでそれを留めた。]
……、揶揄うのはやめてください。
まったく、貴方の考えていることは、…やっぱり良く、理解らない。
…けれど。
[俯いて火照る頬を押さえながら、瞳だけを上げて僅かに高い位置にある赤色を睨む。恨みがましげな声音で覇気の削がれた小言を呟いてから、手を離して。]
そんな顔が出来るのは安心しました。
……そっちの方が、僕は好きですよ。
どういたしまして。…良かったです。
[眼鏡を持つ彼の手元に手を伸ばしながら、視線は眼鏡へと落としたまま呟いた。
きっとこれから、彼の表情はもっと豊かになるのかもしれないと。そんな表情を見られただけ良しとするべきか、と。
敵意を向けられこそすれ、彼からは悪意を感じた事はないから。どうしても強く当たることのできない自分を恨みつつ、その指先からやんわりと取り上げようとする。
それが叶ったならば、顔に戻そうとしてから暫し悩んで、結局胸に提げるに留めただろう。]
(79) g_r_shinosaki 2014/07/08(Tue) 04時頃