―杜山中学校・下駄箱―
[成長した今では以前より小さく見える正門。
開かなければ飛び越えるかと思っていたそれが、すんなりと開くことに疑問を感じる余裕はなくて。
玄関口のドアをくぐって下駄箱にたどり着くと、
べしゃりと気持ちの悪い感触と共に腰を下ろした。]
はー…マジかあ。
ほんっと、さいあ…っく、うう。
[独り言の途中に、ぶるりと震えがくる。
フィリップ以外誰も見ていないだろうが、それでも少し恥ずかしくてごほんとひとつ、咳払い。
ところが、相棒はそんな自分の意図など酌んでくれるはずもなかった。]
「ガンバッテ!ツバサ、ガンバッテ!」
[しんとした廊下にコンゴウインコの大きな声が響いてごまかそうとした恥ずかしさがぐんと増す。
冷たくなっていた頬が熱を持つのを感じつつ、今だけ相棒がインコであることをひどく恨んだ。]**
(78) 2015/12/13(Sun) 10時半頃