[ 第三棟を見渡せば、遠くに誰ぞの姿>>67でも見ることはできただろうか ? 出来たとして、男は特に何も動かずに。
……そう、どうせまた逢えると思っていた為に。彼の視線が此方へ、また歩先さえ向かうことがあれば、軽く会釈くらいはしたことだろう。]
これから先階段ではありますが 、―――歩けますか?それとも先のように担ぎますか。
[ 男は後から梯子を登る彼女へ、最後の段にて手を差し伸べた。その手が取られることもあったなら、ゆるりとその体を引き上げたことだろう。
そうしてふわりと包む潮の土の香に、何故か懐かしささえ感じながら。―――かつりと、靴音を鳴らした 。
「 さいしょのいっぽ 」の踏み出し方を 彼女はどう選ぶだろう。
まるで望んでいたと、願っていたと、……祈りにも似た表情を浮かべる彼女を尻目に映し。その隣、矢張り男はゆらりと影を揺らめかす。
―――長い長い階段を 上り切る先。独つだった男の影も、いまや隣に並びて二つ。 何か景色が変わることは ――あるだろうか? ]**
(77) 2015/07/17(Fri) 21時半頃