[もてなしを期待して、この屋敷に来たわけではないのだと、思う。
もしそうならば、こんな風に仕事を探して回っている筈は、ないのだから。
けれど、主に抱く想いは、「救ってもらった」という、ただその言葉だけ。
今も揺るがずにそれを抱き続けられるのは、何故だろうか。
館の掃除をという言葉に、小さく頷く。
当然だ、10人を超える人間が十分に生活できる空間なのだから、二人では到底手が回るまい。
調度品の少ないところから、勝手に着手していこうか。
館内にいれば、何れ誰かに仕事を任されるだろうし。
何も無ければ、読書へと戻ればいい。
今の章を、何度読んだかも忘れてしまったけれど。
そんな風に、大体の計画を立て終えれば、空のカップをテーブルに戻し、席を立つ。]
……ニコラスは、……何か、洗い物とか、あるか?
あったら廊下出しといて。 簡単なものなら俺が洗っとくから。
[常通り、優雅な仕草で席へと向かう、もう一人の下位の者へとそう声をかければ、食堂を後にした。]
(74) 2014/12/24(Wed) 21時半頃