『 ソレガボクノシゴトナンダカラ 』
[向かいに座る医師の薄い唇が音を紡ぐのを、シーシャはじっと見詰める。
ほら、と促されるまま腕を指しだすと、スティーブンの指がそれを取った。他人の体温。慣れた様子で手早く治療が為されていく。
消毒液のツンとした匂いと、傷口に染みる痛みに少しだけ眉を顰めた。]
──…ウン、知ってる。そんなの。
[放った言葉の後、ゴホ、と短い咳を漏らす。シーシャの表情は、安堵と不満が入り混じったようで。]
「けったいな仕事、選んだよなあ。センセイ。訳の分かんねービョウキで死ぬだけのオレらのお守りなんてさ。…つまんねぇよ。」
肩を竦めて、ハ、と笑う。
皮肉と少しの自嘲の混じった言い様に、医師はどう反応しただろう。
もしかしたらそれは、言葉や表現が違うだけで、この患者との間に何度か繰り返された遣り取りだったかもしれないが。]
(67) 2014/09/01(Mon) 14時頃