[ ――したのが、いけなかったらしい。]
………、は?
[実の所、男としては普段あまりこういう――心から、気の抜けた声を出すのは珍しい。
しかし新たに聞こえた声の方を思わず"見上げて"みたのなら、其処には真っ直ぐ此方に向けて落ちてくる少年の姿>>61。
嗚呼、……嗚呼!何と嘆かわしい事か!
今日――否、今日なのか昨日なのか分かりはしないが、兎も角今回の夢は最悪だ。
この世に生まれて33年、記憶があるのはもう少し少ない。この先仮に80まで生きるとしても、その障害の中でもこんなにも厄介な夢はきっと有りはしないだろうと、びきりと引き攣る顔で少年を見上げながら、考えるのはそんな事。]
(……そんな事を考えている場合か!)
[その間にも、少年との距離は縮まるばかり。声が聞こえたばかりの頃は、衝突まで目視で凡そ20秒程あっただろうその貴重な時間も、今の実に無意味な考え事の所為で……嗚呼そうだ、少なくとも5秒は無駄にしただろうさ。
それに加えて、自分を叱咤するのに2秒。そうすれば、少年との衝突まではもう後10秒程しか無いじゃあないか。]
(67) 2015/06/20(Sat) 18時頃