――船内廊下――
[長い白銀の髪と白衣を翻し、本を片手に足早に廊下を歩く。
眼鏡がずり落ちそうになるのを、人差し指でくいっと押し上げて、息を吐く]
本当はこういうのは薬学科の専門だと思うのだけど。
[医学科で学べる知識は多岐にわたる。薬学ももちろんその範疇ではある。
ポイント制になって以来、効率良くポイントを稼ぐには専門分野の労働に従事するに限るのは分かり切っていること。
もっとも専門分野である医療系の労働に従事しようとすれば、ヨアヒムの監督下に置かれる可能性も必然的に高まる。
そのためセクハラされる女生徒はもちろんのこと、ぞんざいな扱いをされてしまう男子生徒にも引受け手が少ない。
この手の仕事は誰かがやらなければ医療物資が不足して、最悪ポイント高騰につながりかねない。
だから、自分の能力が適うものであれば、極力引き受けている。
本を開き、付箋の張ってあるページを流し読む]
…この程度なら、すぐ終わりそうだわ。
[薬の調合が本日の労働。
内容を確認すれば、時間がそれほどかかるものでもない。
危険物を扱うわけではないから、先生の監督も必要ないだろう。
ホッとしたように息を吐き、歩く速度をやや緩めた]
(62) 2010/09/28(Tue) 21時半頃