── 記憶の片隅の話 ──
[小さな級友の遭難ならぬ白歴史に似た話なら、一つ記憶にある。>>0:149
雪花草の個体サンプルを収集に出た通り道、級友をひとり、引き上げたことがある。
その頃はまだ花形学部への未練が多く胸を秘めていた為に、雪車ごと引きずり出した体を肩に背負った儘。
名乗ること無く救護室へと預け去ったのだった。
勿論壊れた雪車は、設計工学部へ預けて修理した後に返却するよう、手配もしていた。
足がつかないように振舞ったのは、ただ単に礼を言われるのが気恥しい理由からでもあったが。]
俺は。配達学部に属するものは、練習しなくても雪車など乗りこなせるほどの機敏さが元々備わっていると思っていたんだ……。
[男は出来ないことをいとも容易く出来てしまう、あの学部に所属する者を。
雪道で遭遇するその時まで。
羨望を通り越して癪に障る相手だとすら勝手に認識していた]
(57) 2015/01/23(Fri) 22時頃