[キッチンから出たところで、先輩と出会う。
あたしは緑茶を手に、テーブルの椅子に座ると、草餅に手を伸ばしながら声をかけようとする。けれど、先輩が口を開く方が、先だった>>39。]
『…あの。……好きな人、できた?』
[その言葉に、ぴたりと伸ばしかけた手が止まった。
かぁ、と熱くなる頬に、戸惑うあたし。
ちらり、と先輩を見れば、どこか真剣…なんだろうか。真面目な話っぽくて。
追い討ちをかけるように、言葉が続く。]
『……ボクはね、どうやらダメみたいだから。』
[とっさに、フラれた彼女のことが忘れられないんだろうかと思った。
彼女にフラれて自殺してしまうような人だから、そう簡単に新しい恋に何て向かえないだろう、と思う。
あたしは草餅に伸ばしかけてた手を、膝の上に戻した。
しかし、何故だろう。
先輩の紡ぐ言葉には、違和感しか見えなくて。
だって、それは、恋を知らない人のような口ぶりだったから。
…恋に敗れて自殺したはずの人が?
あたしの頭は疑問符でいっぱいになる。]
(55) 2014/03/21(Fri) 00時頃