[わかってるならいい。
上っ面を取り繕われた誤魔化しなんかよりはずっとマシだ。
兄にはその惨めに歪んだ執着めいた何かを、持っていて貰わなくては困る。
例えそれが堪らなく気持ち悪く、嫌悪感を齎されるものであっても。
結局は自分にとっても必要な事なのだから。
こんな事、気づきたくもなかったのは、きっとお互い様だろうし。
兄に抱き締められる>>39のなんて不快である事に変わりないし、
それなのに拒まない自分はもっと不愉快で、
全部気持ち悪くて仕方がないのに、仕舞い込んでた感情を理解してしまった以上、腕を掴む力を緩める事が出来ないでいる。]
―――…、
[どうして、謝ったりしたんだろう。
随分と言い慣れない言葉の響き、特に目の前の相手に告げた事なんて、
それこそいつの事だったか覚えていないくらい記憶に遠い其れ。
口にしただけで何処かむず痒さすら覚えて口を閉ざしていたけど。
戸惑いがちの声とともに引かれた身に、はっとしたように咄嗟に双眸を開いて、腕が伸びきって離される前に、引き留めるように強く白衣を握り込んだ。口の中が乾く。]
(44) 2014/07/04(Fri) 16時半頃